『ロスジェネ心理学』拡張キットとは
ブログやウェブサイトはいつでも更新できるので、一年経てば、一年後の書き手の姿を反映した姿に変貌しています。けれども一度出版してしまった書籍は、よほどの事が無い限り、もう更新できません。ボイジャー探査機を打ち上げて幾星霜が経ち、NASAが21世紀の技術を手にしても今更ボイジャー探査機をどうすることも出来ないのと同じで、『ロスジェネ心理学』という本は私の手許を離れていきました。
もちろん、そのことを承知のうえで私は原稿を書きましたし、「シロクマの屑籠」はおろか、ネットゲームやソーシャルゲームの現場すら知らないような年配精神科医の手許に届いても一冊の読み物として機能するように仕上げたつもりでもあります。インターネットやオタク界隈にドップリ漬かっていない人でも読みやすいよう、用語の選び方や説明方法もかなり意識しました。253ページという紙幅のなかで圧縮をかけ、そのなかでどれだけ分かりやすく・どれだけ沢山のことを表現できるのかを追求したつもりです。
けれども、もっと濃い内容が読みたいだとか、食い足りないだとか、「あれがない!」と感じる人もいるかもしれません。後書きにも書きましたが、実際、253ページという紙幅からはみ出てバッサリカットした部分もたくさんありました。特にインターネット上での自己愛充当、キャラクターを介した自己愛充当のバリエーションについてはもっと多くの文字数を費やしたかったですし、日本情緒の濃厚な『ニコニコ動画』『2ch』の自己愛充当のメカニズムは、どこかで補足しなければならないとも思いました。
なので、この『ロスジェネ心理学』拡張キットの場所を使って、書籍上ではカットした記事や、書籍を読んだ人がもっと内容を楽しめるような記事を順次公開していこうと思います。書籍『ロスジェネ心理学』を読んだ人向けの拡張キットとして、あるいは書籍を読んでいない人でもなんとなく読み物として楽しめるような記事群を目指していきたいと思います。
「書籍に“拡張キット”を用意する」という発想について――オタクな人向けの説明
書籍の世界はどうだか知りませんが、私の慣れ親しんでいるゲームやアニメの世界では、作品本体がリリースされて暫くしてから、それらに追加できるブースターキットが発売されたり、スピンオフ作品が付け加えられたりすることがあります。
ゲームの世界で言うなら、Civillization4の拡張キットとして発売されたBeyond the Sword、アニメの世界で言うなら、とある魔法の禁書目録のスピンオフ作品のとある科学の超電磁砲、あたりがそれにあたります。また、Civillization4のような海外産のゲームでは、ファン有志によって簡易拡張パック(modification、一般にModと略される)がどんどんつくられ、ゲーム本体に自由に着脱できるような仕組みもよく見かけます。
だったら、自分の書籍にも、ブースターキットやModに相当するものがあったっていいじゃないか――そんな気持ちで、私は『ロスジェネ心理学』拡張キットを整備することにしました。城に喩えるなら、書籍が本丸で、二の丸や三の丸にあたるのが拡張キット、といった感じでしょうか。『ロスジェネ心理学』を読んだ人も、まだ読んでない人も、ちょっと見てやって頂けると嬉しいです。