・思春期後半からの「過不足のない服装」
思春期後半まで服装にあまり気を遣ってこなかった人が、途中から服装をどうにかしたい場合、ファッションオタクになりたいのでない限りは、「服飾で加点を求めるのではなく、減点されないようにする」を優先させるだけで十分で、無理をする必要は無い。というより、むしろ無理をしないほうが良いかもしれない。
アクセサリの項目でも触れたが、一般に、ハイレベルなファッションアイテムを身につけるほど、服飾と、身につけている人の内実・ライフスタイルとの調和が難しくなりやすい。つまり服と自分自身とがチグハグになってしまいやすい。コミュニケーションの下手な、いわゆる“ファッションオタク”が悪い意味で目立ってしまう理由の大半は、ファッションだけが突出してハイレベルになってしまった結果、服を身につけている人の内実・ライフスタイルとの統合に失敗していることに由来する。
こうした事情を踏まえると、今まで服装にリソースを割いていなかった人が最初に自分で服を買いに行く先は、ユニクロで差し支えないと思われる。初手からブランド物に手に出しても火傷するだけである。三十代にさしかかるか、既にさしかかっている人の場合も、ファーストラインはユニクロで問題無い。洗濯による劣化速度が比較的遅い割に、安価で、手堅いデザインは捨てがたい。
そういう意味では、洗濯による劣化速度が速く、コストパフォーマンスとデザイン性を強引に共生させようとしているファッションセンターしまむらは初心者向きではない。しかも、しまむらには低年齢向きのデザインが多いので、思春期後半の人が手を出すと、老けた中学生や安っぽいヤンキー崩れのような格好になってしまいやすい。ファッションセンターしまむらに手を出すなら、若いうちに限る。
「ユニクロだけではいくらなんでも寂しい」という人は、そこではじめて、もう少しお金のかかる服屋に出掛ければ良いと思うし、無印良品に寄り道するのも悪くないかもしれない。パルコ、丸井、セレクトショップ各種が選択肢に上がるだろうが、それぞれの店舗・ブランドは一長一短であり、どれがベストとは一概には言えないが、常に、自分のライフスタイルとの整合性を考えながらお店を選んだほうがいいと思う。また、そうした店が必ずユニクロよりも優れた服を売っているとは限らない点には注意が必要。デザインや裁断や生地の面で、ユニクロには無い長所をはっきりと持った服でなければ、買うにはあたらない。
なお、こうして店舗では、バーゲンの時期には必ずと言っていいほど粗悪品が出回るので、バーゲンのbefore afterで、服の質感を比較検討するととてもいい。バーゲン時期の粗悪品がどう粗悪なのか・粗悪でない品とはどう違うのかを丹念にチェックし学習するには、バーゲンの直前と直後に店舗巡りをするのが一番早い。2~3年程度それをやるだけで、かなり勉強になる。
ただし、[服装を意識しはじめたつもりが→ファッションオタクになっていた]という失敗経験談がネット上に溢れているさまを見るにつけても、ファッションに過剰に埋没するのは危険といえば危険だ。とりあえずブランド物や高価な品物で身を固めておけば、自分自身の内実・ライフスタイルとは無関係に自信の無さを埋め合わせることが出来るかもしれないが、それは自信を服装にアウトソースしているだけで、自分自身のコミュニケーションの技能向上にはほとんど寄与しない。それどころか、周囲の人からはアンバランスな服装をした痛々しい人、と思われるリスクすら負うことになる。また、家計に占める被服費が超過しすぎるのもまずい。
【加齢と服装選び】
なお、選びやすい服・似合いやすい服のレパートリーは、歳をとってくると微妙に変化してくることをお忘れなく。若づくりも悪くないが、度が過ぎれば非常に痛々しいおっさん/おばさんが出来上がる。それぐらいなら、加齢にあまり左右されない服飾選びを意識しておくと、同じスタイルを長く使いやすいかもしれない。例えばジャケットの使い方・選び方のノウハウは何年経ってもおそらく役に立つだろうし、仕事着がスーツの人も、長年袖を通すスーツに気を遣う甲斐があると。逆に、今しか着れない服・今がギリギリの服に時間とお金を集中させるのは、あまり効率的とはいえない。
これまで長年かけて自分自身のライフスタイルと服装の辻褄合わせをしてきた人ならともかく、“周回遅れで服に目を向け始めた人”の場合、三十路なら三十路にふさわしい路線を志向したほうが良いと思われる。あまりにも若すぎるラインナップは、ちょっと怖い。そういう意味でも、ユニクロは大ハズレしにくい服が割と選びやすく、手堅い選択のようにみえる。ファッションの起点として、ユニクロを生かそう。
※ユニクロのこうした優位性は2012年現在のものです。数年後にどうなっているのかは不明です。あしからず。
【参考リンク集】
着合わせの問題、具体的なブランド名、なども含めて、以下のリンク先はどれも参照しやすい。20代向けの内容が多いという難点を除けば、ファッションは良質のwebや書籍が揃っている分野だと思う。
[関連]:→一からはじめるファッション入門マニュアル改訂版β
[関連]:→メンズファッション 情報サイト スタイルコネクション
[関連]:→脱オタクファッションガイド
[関連]:→ぬる速 やる夫が脱オタをするようです。
[関連]:→脱オタク用ファッションの基本形wiki