鏡映自己対象転移:mirroring selfobject transference

 鏡映自己対象として期待できる人に対して、承認や賞賛を求めて思わずポッと出た自己対象転移。自己対象転移の性格上、幼児が養育者に求めるような、ハイレベルな承認や賞賛の求めとなることが多い。鏡映的自己対象への渇望度合いがとても高い人が、承認や賞賛のチャンスに遭遇したなどに、ついついやってしまいがち。

 例1:普段はあまり褒められたり賞賛されたりすることの無い根暗なオタクが、「君ってアニメに詳しいんだね」とクラスメートに言葉をかけられて、舞い上がってしまって自分の秘蔵コレクションを全部学校に持って来て朝からアニメ薀蓄をマシンガントークしてしまった。

 例2:ガールフレンドが出来るたび、ガールフレンドに対して過剰な要求をしてしまう男性。ガールフレンドが出来るまでは、賞賛や承認を殆ど求めないが、仲が一定以上に深まると、自作の詩を毎晩朗読して且つ楽しんでくれるようせがんだり、身辺のあらゆる世話をするよう求めたりと、俄に過剰な要求をし始める。

 臨床的には、鏡映的自己対象転移の出現は必ずしも悪いものではなく、(鏡映自己対象を介した)自己愛充当の成熟のチャンスに繋がる可能性がある……特にそれが、妥当な変容性内在化へと繋がっていける場合にはそうである。しかし上の例が示しているように、日常レベルで鏡映的自己対象転移が起こると、人間関係が破綻してしまうリスクを負うことになる。抑制的な身振りを普段している人が、とつぜん豹変してハイレベルな求めをしてきたら、大抵の人はついていけずにドン引きしてしまうからだ。また、日常レベルではない、臨床レベルの治療関係のなかでも、このような破綻が生じる可能性は、ある。

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