4.少女の濫費状態はいつまで続くのか?


 ここまで述べてきたような 1. 2. 3. のような理由が重なりあった結果、古典的な美少女に対するニーズと男性ジェンダーを迂回したいニーズのどちらにも対応可能なコンテンツがヒットしやすい、現在の男性オタク界隈の風景が現れているのだろうし、これほど大量の少女が多様に消費されているのだろうと私は考える。もし、1.の理由を欠いていれば、界隈はもっと百合・レズ作品に満ち溢れた風景になっていただろうし、2.の理由を欠いていれば、90年代以前を彷彿とさせるような、きわめて単純に美少女所有願望を充たすような作風に傾いていただろう。消費者側の心理的ニーズの微妙なバランスのうえに、男性オタク界隈の少女の消費情況は成立している。

 では、こうした少女の消費状況はいつまで続くのだろうか?理屈としては、1.2.のニーズを抱えた消費者が現在のバランスで存在し続ける限り、概ね同じような消費状況がいつまでも続くものと推測される。しかし、本当にそうなるだろうか?

 ここで考えておきたいのは、ベタな性的欲求はともかくとして、男性のジェンダー・ロールへの忌避がいつまで続くのか?というものだ。男性オタク界隈の当該消費者において「男性のジェンダー・ロールの遂行は非常に厳しい」という認識が変わらない限り、男性ジェンダー・ロールへの忌避は続くだろう。そして目下のところ、男性的なジェンダー・ロールを自然に身につけにくい社会環境が続いている ように見えるので、今後も、男性的なジェンダー・ロールを忌避するような消費者が市場に供給され続けるものと思われる。まだ当面の間は。

 そして、もう一つ考えておかなければならないのは「男性オタクに年齢的な限界があるか」という点である。

 やおいの場合、一生コミケに通い続けるような例外を除けば、多くの女性は進学や就職に伴って「足を洗う」「カタギになる」のが常だった。このため、高年齢なロングテールがあるとはいえ、平均年齢は比較的若く、参加者の新陳代謝も早い。

 ところが男性オタク界隈の場合、進学や就職に伴って「足を洗う」「カタギになる」ことが少ない。一時期の、いわゆる「脱オタ」もあくまで「脱-オタク-ファッション」であってアニメやゲームと手を切ることでは無かったことが示すように、男性オタクはなかなかオタクをやめず、年齢的な限界もかなり高い。50代、60代まで少女趣味が続けられるのかは不明だが、少なくとも40代ぐらいまでは息が続く。このため年齢層の高いオタクが長く界隈に留まるため、2015年あたりになってもなお、1970-80年代生まれの男性オタク消費者が大量に残存するものと推測される。

 このような高齢ファンの貯留もまた、男性オタク界隈の消費者動向を保守的に傾け、少女の消費情況を変えにくくすると推測される。と同時に、過去作品を知っているファンが多いがために、過去作品からの引用を生かしすような作風・テクニックが今後さらに増加するとも推測されるが、そのあたりは本テキストの取り扱う範囲ではない。

 以上を考えると、2011年現在に成立している少女の濫費情況は、多少の変化はあれど、向こう5年程度は似たような傾向が続くのではないか、となる。私個人としては、そろそろ男性キャラクターの地位復活に期待したくなるけれども、こと深夜アニメやライトノベルの界隈に限って言うなら、その日はまだ遠そうである。  

 ※2012年11/07追記:最近は、遂に男性キャラクターのポジションが息を吹き返しつつあるように見える。「男性主人公、たくさんの美少女、都合の良い兄貴分や相談相手の同性男性」というベタな構成の、男性ジェンダー・ロールを迂回する装置としての美少女キャラクターをそれほど強調しない構成の作品が目立ってきた。今後、男性オタク界隈における美少女キャラクターの消費は、割合としては1.がさらに強まり、90年代〜00年代に流行したスタイルが衰退する可能性がある。とはいえ、上述のようなオタクの世代交代問題を考慮するなら、こうしたトレンドの変化は緩やかに進行していくものと推定される。

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