・2.萌えの登場(1990年代前半まで)

 
 こちらの続きです。

 私の記憶が確かなら、1990年代前半から「萌え」という語彙を見かけはじめていたような気がする。少なくとも1995年までにはオタク界隈で流通し始めていたのは間違いない。この語彙のルーツについては諸説ある※1が 、ルーツが何処であれ、この語彙が自然発生的にオタクの間で使われるようになり、“美少女キャラクターに対する思慕が募って堪らない時”に好んで用いられたことだけは確かだ。

 ※1「萌え」のルーツとしては、『投稿雑誌ファンロード』起源説、パソコン通信起源説、アニメ『恐竜惑星』起源説 などが有名。

 実在の女性はもとより、美少女キャラクターに対してさえ気恥ずかしさを禁じ得なかった当時のオタク達にとって、「萌え」という曖昧なレトリックは、自分の感情をオブラートに包んで表現できる語彙として重宝した。「モノにしたい」「恋人にしたい」といったストレートな表現と違って、「萌える」という曖昧な表現であれば、気恥ずかしさは軽くなるし、「この美少女キャラクターは仲間内で誰のモノなのか」といった不毛な摩擦も回避できる。現在では忘れられがちだが、「萌え」という語彙が用いられはじめた背景には、「ストレートな感情表現やセクシャルな表明を恥ずかしいと思いがちなオタクのメンタリティ」が存在していた。
 
 さきに述べたように、1990年代に入ると“美しさ”よりも“かわいらしさ”が先行した、アニメ顔の美少女キャラクターはオタク界隈では完全に優勢となり、「萌え」という語彙も、専らそうしたアニメ顔の美少女達に対して用いられていった。とはいえ、“かわいらしいアニメ顔の美少女”という最低限のテンプレート以外の部分については、どんな特徴を持ったキャラクターがウケが良いのか、未だ試行錯誤の段階にあった。
 
同級生2ヒロイン一覧

 このため、「女子校生」「幼女体型」「ナース」といった外見上の特徴や、「幼馴染み」「男勝り」「丁寧な言葉遣い」といった振る舞いの特徴など、さまざまな個性・特徴を与えられた美少女キャラクターが市場に投入され、(消費者たる)オタク達の市場淘汰に曝された。この淘汰の結果として、“女子校生”“幼なじみ”“メイド”など幾つかの『萌え属性(特徴)』が人気を博し、定番として後発作品のキャラクター達へと継承されていった。『ときめきメモリアル』『同級生』といった当時の人気作品のなかで特に支持を集めたキャラクター達は、いま見るとさすがに荒削りにみえるが、後の美少女キャラクターの原型となる幾つかの『萌え属性』はきちんと踏まえられている。

    →続き『3.第一次萌えブーム(1990年代後半〜2000年頃)』を読む


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