・鏡について

 服装選びや表情の試行錯誤に必須になるアイテムが「鏡」だ。自分の姿がどうなのかを確認できなければ、身だしなみの領域はどうにもならない。
 
 もしあなたが、思春期を迎えて間もないとしたら、“姿勢や表情を試行錯誤したい”“みっともない身なりは避けたい”という思いがわきあがってくる可能性は高いし、その気持ちは、良い姿勢・表情を鍛錬していくうえで必要なものだと思う。そういう気持ちが沸いてきたら、鏡の買い時だ。
 
 また、格好をつけたいと思っていない人でも、鼻毛や寝癖のような、身だしなみとして減点の対象になりそうなものをチェックする必要はあると思うので、モテたいわけではない人も、鏡を購入しておくにこしたことはない。第二次性徴が始まった時点で、男女を問わず、用意しておいたほうが良いと思う。
 

【鏡を買う際のポイントと、使い方】

 鼻毛や寝癖のチェックにも使うからには、鏡を買い求める際には「鏡を覗かない日は無い」という前提で選んだほうが良いと思われる。個人的には、洗面台の鏡に加えて、全身がうつる鏡がもう一つあると重宝するのでお勧めしたい。洗面台までわざわざ歩いていかなくても構わないのは、実はかなり大きいメリットだ。特に、洗面台が家族共用な暮らしをしている場合には、このメリットはさらに大きくなる。「自分の身だしなみの全身状態を、自室にいながらにしてチェックできる」というのが大切だ。あるのとないのでは全然違う。
 
 なお、化粧室に入った時や、街のショーウィンドーに映った自分の姿が見える時などには、自分が今どんな顔をしているのか・どんな姿勢をしているのかをチェックする良い機会なので、ときどき意識してやっておくと良いかもしれない。ふだんの自分がどんな姿勢・表情・服装で街をうろつきまわっているのかを視ておけば、おのずと見た目に対する意識は変わる。また、自室の鏡や服屋の鏡では気付きにくい、雑踏のなかで自分のコーディネイトがどう映えるのかをチェックするにも向いている。自宅で見るのとは違った気付きが得られるかもしれない。
 
 
【鏡を覗き込みすぎるリスク】
 
 ただし、何事も過ぎたるは及ばざるが如しで、「鏡を覗きすぎた」結果、自分自身に対して敏感になりすぎてクタクタになってしまうリスクはあるかもしれない。このウェブサイトは、精神疾患に罹患している人を対象とはしていないけれども、いったん自分自身を気にしはじめたら徹底的に気にしなければ気が済まないような、強迫性の強い人には、鏡を覗く手法はお勧めしにくい。
 
 そうでなくても、鏡によるチェックは今まで意識しなかった自分自身の姿・他人からのまなざし、といったものに対する自意識を強めやすいので、心労が溜まりやすくなる。現状でメンタルヘルスの維持に精一杯の人・メンタル脆弱性の高い人の場合は、鏡を覗き込み過ぎないほうが安全かもしれない。
 
 このように、「鏡を覗く習慣」には審美性チェックの効果だけでなく、自分の自意識への働きかけという作用を多分に含まれている。大半の女性は、こうした自意識を自然に身につけていくが、男性の場合、かなり歳を取っても身についていない人が時々いる。しかし身だしなみや審美性の問題はコミュニケーションを形成する一要素なので、こうした習慣と自意識が身についているか否かは、振る舞いや物腰の差となって蓄積しやすい。思春期の前半にはその差は小さなものかもしれないが、十年、二十年と積み重なれば、無視できないほどの差に広がっていくだろう。
 
 過剰適応の問題さえ避けられるなら、「鏡を覗く習慣」は社会適応に対して促進的だと思われる。


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